【独占インタビュー】天龍源一郎(天龍PROJECT)
“35周年記念興行はあくまでも通過点!『LIVE FOR TODAY』。これからも、1日1日を一生懸命に生き抜いていく!”
11・10『天龍源一郎プロレス35周年記念興行 Revolution 〜WE ALL WANT TO CHANGE THE WORLD〜』(後楽園ホール)

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 大相撲前頭筆頭の肩書を引っ提げてジャイアント馬場率いる全日本プロレスに入団した天龍源一郎は1976年11月13日にテキサス州ヘレフォードにおけるテッド・デビアス戦でデビューしてから35周年を迎えた。そして、来たる11月10日には東京・後楽園ホールで『天龍源一郎プロレス35周年記念興行 Revolution〜WE WANT TO CHANGE THE WORLD』が開催される。

 全日本からスタートしてSWS、WAR、全日本復帰、フリーとしてWJ、新日本、ノア、ドラゴンゲート、ハッスル…と、闘いと冒険を求め続け、還暦を迎えた昨年には天龍プロジェクト旗揚げした。人は彼を“ミスター・プロレス”と呼ぶが、本人は61歳になった今もなお、あらゆる世代の選手と同じ目線で勝負して第一線で踏ん張っている。
今回の35周年記念興行についても「引退試合じゃないからね。あくまでも通過点だから…」と主張する天龍に、改めて今大会に賭ける気持ち、今大会の意義、そして今後のプロレス人生について聞いてみた――。

――プロレス・デビュー35周年、改めておめでとうございます。振り返れば、14歳の時に好きで入った大相撲は13年弱でしたけど、これほど長くプロレスをやるとはご自身でも思っていなかったんじゃないですか?

天龍 全然、想像出来なかったですね。想像出来なかったけど、でも、途中からプロレスに対して漠然と挑戦…その挑戦が意欲的という言葉に変わったというのもありますよ。初めはうまくいかなくて「こんなはずじゃない! こんなはずじゃない!」ってもがきながら、その延長線がずっとつながって35年になったっていう感じですね。みんなから「もう35年ですね」って言われて…俺自身はこれからもずっとプロレスを続けていくわけだから「別に記念大会は必要ないよ!」って思っていたんだけど、やっぱり天龍プロジェクトの旗揚げ何戦目かで怪我したというのが大きかったね。そこでちょっと自分を振り返って見ようかなと思ったんだよね。

――今回のプロレス35周年記念興行のサブ・タイトルにRevolution、天龍革命がスタートした時のジャージに入れていたWE ALL WANT TO CHANGE THE WORLD(俺たちは皆、世界を変えたいんだ)のメッセージを使っているところに天龍さんの思い入れを感じます。

天龍 そうだね、そうした言葉はギュッと凝縮された俺の人生観みたいなものだね。俺の性格がそういう言葉をピックアップさせたと思うんだよね。

――そして記念試合は天龍さんを含めて三冠ヘビー級王者が6人集まった三冠王者プレミアムマッチ(天龍&諏訪魔&鈴木みのるvs佐々木健介&小島聡&太陽ケア)ということで、やはり天龍さんの根っこにあるのは全日本プロレスなんだと感じました。

天龍 やっぱり天龍源一郎は全日本プロレスからスタートしたわけだからね。一言で言えば、俺の帰巣本能ですよ。そこで今回出場してくれる5選手は各団体が気持ちよく貸し出してくれましたしね、ホントにうまく揃ったと思いますよ。それはこの社会に長くいたということかな(苦笑)。

――全日本では擦れ違いだった諏訪魔とは初めて同じリングに上がりますね。

天龍 彼はプロレスラーに一番大事な向こう気の強さとか、体の大きさもあるし、常に何かを発信しているっていう。いいにつけ、悪いにつけ何かを発信しているっていうことがレスラーには大切なんだよね。その姿勢が見えることに興味を持っていますよ。それと最初にプロレスに入ってきた雰囲気がジャンボ鶴田に似ているというか。彼は大学でレスリングをやって、その後に普通の会社にいて転職っていう感じで全日本に来た印象があるからね。「全日本プロレスに就職します」ってミュンヘン・オリンピックのレスリング代表から入団した鶴田選手とダブる部分があるんだよね。俺の中では、俺が知ってる頃の鶴田選手に似通っている部分があるんですよ。だから、戦うよりもタッグを組んで横にいて、間近に見る方が彼のやりたいことがよく見えるかなっていう感じですね。

――そして歴代三冠王者の中でもアクが強い鈴木みのるをパートナーに選びましたね。

天龍 彼もこの業界を一本独鈷(いっぽんどっこ)で一生懸命生き抜いているからね。そこに共鳴するものがありますよ。いざ試合になったらタッチしてくれるか心配だけど(苦笑)、新日本の選手に嫌がられながらも外敵と呼ばれて、あの強大な新日本の中で一緒に頑張って戦った仲でもあるわけだからね、俺たちは。実際にトリオになったらどんなチームになるのかは俺にも読めないけど、読めないから逆にいい方向にいけば莫大な力を発揮するだろうし、壊れるんだったら…いとも簡単に壊れるだろうね(苦笑)。

――予測不能のトリオですね(苦笑)。そして全員が三冠経験者だから相手チームも強力なわけで、まず佐々木健介…。

天龍 彼はやっぱり戦ってみて面白いレスラーなんだよね、俺にとっちゃ。彼のプロレスに対する姿勢は貪欲だから、戦って面白い選手ですよ。

――先日のマスカラス来日40周年興行(10月7日、後楽園ホール)では天龍さんの双子の兄の大ハヤブサが健介と凄いチョップ合戦をやりましたね。

天龍 兄貴は「健介のチョップで鳩胸がヒラメになった」って怒っていたよ(苦笑)。俺は兄貴の仇を取らなきゃいけないからね、真っ向から行きますよ。健介と真っ向からやり合うっていうのは、俺にとっちゃ、今の俺自身を測ることでもあるんですよ。

――新日本に最入団した小島聡は、天龍さんと同じ時期に全日本に所属していて、天龍さんの三冠に彼が挑戦したこともありましたね。

天龍 彼はね、スタン・ハンセンからラリアットのコーチを受けていたからね、だったら「ハンセン直伝のラリアットを受けてやろうじゃないか!」ってやつですよ。俺のプライドのひとつとして「あのハンセンのラリアットにも潰れなかった俺が、ここで負けてなるか!」っていうのが未だにあるからね。だから小島聡のラリアットは名前だけなのか、名実ともにハンセンから伝授されたのかを俺の体で確かめてやろうと思ってますよ。

――そして最後のひとりは馬場さんの弟子で、現在の全日本の中でも“最後の王道継承者”と呼ばれる太陽ケア…。

天龍 彼とは仙台でチャンピオン・カーニバルの優勝を争ったこと(01年4月11日=天龍が初優勝)を思い出しますよ。俺にとっては全日本プロレスの馬場さんの匂いがする選手だね。だからどうしても反対側のコーナーに立って戦いたいっていう。オーソドックスで、器用で、タイミングが良くて…馬場さんが一番好きなタイプの選手だからね。

――こうしてお聞きしてみると、凄いカードだと改めて思います。

天龍 まあ、俺は普通通りサラッと一生懸命やりますよ。このメンバーを揃えられて満足感があるし、悔いもないし、だからこそ、この試合は自分のプロレス人生の通過点だと思ってるんだよね。ここから自分がどう変わっていくか楽しみでもあるしね。

――あくまでも通過点だと?
天龍 「こんなはずじゃない!」と思ってやってきたら35年が経って…今現在の俺も「こんなはずじゃない! いつかは元気な天龍源一郎を見せてやりたい」と思ってやってるわけだからね。だから感慨深いのは確かだけど、あくまでも通過点なんですよ。

――メイン以外も天龍さんの歴史を振り返るにふさわしいラインナップになりましたね。格闘人生の根っことも言える大相撲の元横綱の曙と、大相撲から全日本に入り、SWS、WAR、天龍プロジェクトなど要所で天龍さんと過ごしてきた嵐の一騎打ちもあります。

天龍 俺と同じように2人ともプロレスに転向して、いろいろなギャップに悩みながら現在の地位を確立したんだろうから、それを発揮してほしいという気持ちがありますよね。これはドスンドスンという迫力あるプロレスを展開してくれることを期待してますよ。ヘビー級の迫力あるぶつかり合いは馬場さんの時代の全日本の特徴でもあったから、それもお客さんに感じてもらえればいいというマッチメークですよ。

――そしてコテコテの全日本の匂いがするのが第1試合ですね。百田光雄、グレート小鹿という昭和の匂いがあれば、その相手は泉田純至、菊地毅、志賀賢太郎の90年代全日本になりました。

天龍 何かイメージ的には全日本のオープニングという感じになればいいと思ってますよ。全日本の第1試合と言えばみっちゃん(百田)だし、そこに俺の先輩でもあるグレート小鹿がいる。そして反対側には全日本、ノアで育った選手だから、全日本の大きな流れを表現出来るカードなんじゃないかと。ノアの仲田龍GMからも「協力させてもらいます」という話がありましたけど、ちょうど同じ日に試合が重なってしまって「またチャンスがあれば…」ということでね。でも、その気持ちは嬉しかったし、新日本も全日本も気持ちよく協力してくれましたし、ドラゴンゲートも試合を提供してくれますしね。俺が「この選手を貸してほしい」って言った選手は各団体が気持ちよく出してくれましたよ。ただ、さっきも言ったように、俺の中では帰巣本能から生まれた大会だから“全日本プロレス色”を核にしたかったんですよ。メインに三冠王者が揃うわけだから「あれもこれも」って入れるわけにいかなくなっちゃったんだよね。「何が見せたいんだよ、これ!?」っていうのは嫌だったんですよ、俺としてはね。大会の編成上、その7〜8割は“俺が知ってる頃の全日本”をテーマにしたかったんですよ。だから三冠王者が俺以外に5人も集まったっていうことで満足ですよ。それぞれ活躍している団体とか立場、人間関係が複雑な中でよく参加してくれたと思ってますよ。やっぱりね、馬場さんがいた頃の全日本プロレスへの帰巣…それが今まで35年やってきた俺のプロレス人生の句読点になると思っているんですよ。あれだけ好きだった相撲を辞めて26歳で全日本に入って、40歳になった1990年から流浪の旅をしてきたけど…この年齢になったら、やっぱり故郷って言うか、一番最初に入った全日本が懐かしく感じられるというのが嘘偽りのない正直な気持ちですよ。だから句読点として1回ここで振り返ってもいいかなと。それはやっぱり帰巣本能としか表現しようがないものかな…。

――確かに全体を見ると全日本というものを軸に大相撲、WARと天龍さんの歴史が感じられる構成になってますね。WARの匂いとしては、WARが業務提携していた女子プロのLLPWから神取忍が久々に出場して、WARが始めたミックスドマッチ(神取&ウルティモ・ドラゴンvs井上京子&ザ・グレート・サスケ)が実現しますし。

天龍 WAR得意のやつですよ。WAR時代にLLPWに協力してもらったのは…アメリカにいる時に男子と女子の区別なく試合が組まれるのを見ていたし、1枚のチケットでお客さんにいろいろなプロレスを提供したいというのがありましたからね。まあ、神取は俺との因縁があったから出場してくれることになったんだけど、そうしたことも思い出しながら楽しんでくれればいいと思いますよ。タッグで当たった時(95年12月8日=大田区体育館)は俺と浅井(ドラゴン)が組んで冬木、神取組と戦ったんだよね。

――あの時は神取の一本背負いが見事に天龍さんに決まりましたね。あとシングル(00年7月20日)では、天龍さんがグーパンチで神取の顔をボコボコに変形させてしまいました。

天龍 いや、俺はそんなヒドイことしてないよ。あれは神取の化粧が取れちゃっただけだよ(苦笑)。…まあ、神取だけじゃなくて、
井上京子も天龍プロジェクトに参戦してくれたし、浅井(ドラゴン)とサスケはWAR時代に一騎打ちをやっているし、いろいろな角度から楽しんでもらえればOKですよ。

――現在新日本プロレスで活躍している邪道&外道に注目しているんですが。
天龍 彼らはWARの時に冬木軍として活躍して、俺が一番可愛がった付き人の冬木弘道のカラーがあるからね。彼らが出場してくれることによってファンの人たちがそこに冬木の存在も感じてくれたら、俺としたらこんなに嬉しいことはないよね。

――では最後に、この35周年興行で句読点を打った後の天龍さんの展望を聞かせてください。

天龍 これは前から言ってるようにね、1日1日を一生懸命に生き抜いていくしかないですよ。そういう生き方の結果が今回の35周年でもあるしね。レボリューションやっていた頃から俺は常にそうなんだけど先々のことを考えて「ああして、こうして…」っていうのは一切ないんだよね。「一生懸命やっていれば何かがある」という漠然としているかもしれないけど、そんな生き方ですよ。

――天龍さんは昔から「今日を一生懸命生きなければ明日は来ない」「こういう仕事をしていたら、いつアウトになるかわからないんだから、半年先のことは考えられない」と言ってましたよね。

天龍 だから今日を一生懸命生きる俺を面白がって、ファンの人たちは興味を持ってくれているんだと思うしね。多分、俺の未来は…わからないですね。俺もわかんないよ、ホントに(苦笑)。かつてレボリューションのジャージに入れていた『LIVE FOR TODAY』って言う言葉が俺の生き方ですよ。

<聞き手=プロレスライター/小佐野景浩>
※インタビューは全対戦カード発表前に実施しています。


■11・10『天龍源一郎プロレス35周年記念興行 Revolution 〜WE ALL WANT TO CHANGE THE WORLD〜』(後楽園ホール)全対戦カード
【メインイベント:三冠王者プレミアムマッチ 無制限1本勝負】
天龍源一郎(天龍プロジェクト)
鈴木みのる(パンクラスMISSION)
諏訪魔(全日本プロレス)
vs
佐々木健介(健介オフィス)
小島聡(新日本プロレス)
太陽ケア(全日本プロレス)

【セミファイナル:45分1本勝負】
嵐(フリー)
vs
曙(フリー)

【第5試合:30分1本勝負】
ザ・グレート・カブキ
TAJIRI(SMASH)
THE KABUKI(天龍プロジェクト)
vs
金村キンタロー(アパッチプロレス)
邪道(新日本プロレス)
外道(新日本プロレス)

【第4試合:タッグマッチ 30分1本勝負】
折原昌夫(メビウス)&土方隆司(フリー)
vs
大谷晋二郎(ZERO1)&横山佳和(ZERO1)

【第3試合:ミックスドマッチ 30分1本勝負】
ウルティモ・ドラゴン(闘龍門MEXICO)&神取忍(LLPW)
vs
ザ・グレート・サスケ(みちのくプロレス)&井上京子(ワールド女子プロレス・ディアナ)

【第2試合:DRAGON GATE提供マッチ 30分1本勝負】
ドン・フジイ&新井健一郎
vs
横須賀享&K-ness.

【第1試合:6人タッグマッチ 30本1本勝負】
百田光雄(フリー)
グレート小鹿(大日本プロレス)
X
vs
泉田純(フリー)
菊地毅(フリー)
志賀賢太郎(フリー)
格闘探偵団バトラーツ 石川雄規 独占インタビュー


バトラーツは解散してもラストサムライの魂は消えない!

石川雄規という男。凄いプロレスをやってきた男だ。毎回、傷だらけ。会えば必ずどこかを負傷していた。バトラーツが解散するというので9月某日、石川と会った。またしても石川は足を引きずって私の前に現れた。なんてヤツなんだろう。44歳になる。この年になるまでずっと身を削ってきたのだ。この男に「なぜバトラーツを解散するんだ?」とは問えない。これだけ身を削りボロボロになっている男に、そんな間の抜けた質問などできるわけがないではないか。これからインタビューを掲載するが、それにあたって、まず石川とバトラーツに「ラストサムライ」を見る思いで敬意を表したい。

『Once upon a time BATTLARTS 〜あの時を忘れない〜』
11/5(土)新宿FACE
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天下を獲るつもりでバトラーツ旗揚げ

(懐かしいバトラーツの写真がいっぱい掲載されたチラシを見て)
―これは懐かしいですね。こういう写真を見ているとバトラーツを取材していた初期の頃を思い出すよね。選手の情熱がビシビシと伝わってきた。取材に行くけど、どこも辺鄙なところでね。会場まで行くのにバスを使うところばかり。タクシーなんて通っているところじゃないから、帰りもバス。試合が終わって週プロ編集部に戻るのが難儀でね。最終に近いんだよね。

石川 あはは。関東地方なんですけど、そういうところばっかり。

―思い出すのは選手がみんな明るかった。笑顔が絶えなかった。やるほうも青春だった。取材するほうも青春だった。僕はもう若くなかったけどね(笑)。編集部に戻って写真を選ぶんだけど、どいつもこいつも顔の表情がよかった。そりゃそうだ。バチバチだからね。元気があった。それとバトラーツは悲鳴が上がるような痛い表情に特徴があって、それを選ぶ。それがバトラーツの特長だった。
石川 俺たちは身を削っていた。また身を削っている分、当時の記者の人たちも身を削って深く考えてくれた。俺たちのやろうとしていることを橋渡しして世間に投げつけてくれましたよね。

―そりゃそうですよ。バトラーツの選手たちの情熱をほったらかしには出来ない。それにしても、あれだけ痛い思いをしているくせに、馬鹿じゃないかなと思うくらい選手は明るかったですよね。

石川 100人観客がいるか、いないかの田舎の会場でやって、試合が終わるとボロボロになった体を引きずりながらリングを片付けて、次の田舎の会場に行くんだよね。そしてリングをまたみんなで組む。

―みんな疲れているくせに目がキラキラしていた。

石川 だって必ず天下を獲るんだと思ってましたからね。獲れなかったけど(笑)。

―天下を獲るって考えたのは、どんどんお客さんが増えていった頃?

石川 旗揚げした瞬間。業界の関係者からは3日で潰れるといわれて、でも俺は天下を絶対獲ろうと思って旗揚げした。天下を獲るなんて何の根拠もないんだけどね。自分を信じていただけなんだけど。


俺たちが先にぶっ倒れるか、世間が気づくのか…

―いま思うとバトラーツというのは藤原組が解散して生まれたわけで、あの時、どんな団体にするんだという理想はあった?

石川 理想などないですよ。まず思い切り試合がしたかった。世間が俺たちの凄さに気づくのが先なのか、俺たちがぶっ壊れるのが先なのかという激しい心情でスタートしたわけですからね。自分を信じていなければ出来ませんでした。痛くて苦しい闘いしか出来なくてね。でも、それしかできなくて。プロレスラーなんだから痛いのは当たり前。苦しいのは当たり前だと思ってやってきただけ。高い理想のもとに集まったわけでもないですからね。

―でも、痛くて苦しい闘いしかできないバトラーツは1998年の旗揚げ2年目に両国国技館大会を成功させたんですよね。これはまさに伝説となる興行のひとつ。

石川 バトラーツは時代が作ったんですよ。俺たちは時代に呼ばれただけなんですよ。

―確かに時代もあったが、バトラーツには情熱があった。だから週プロも応援していた。アレクサンダー大塚もあんな大きな肉体を持ちながら初々しくってね。小野はあくまで素人っぽい肉体とルックスを持ちながら、しかし心は過激なプロフェショナル。マッハ純次もガツガツしていて勢いあったなあ。みんな、何と言うか若い団体なのに色気があった。プロレスっていうのはプロレステクニックを持っている団体のことを言うんじゃなくて、心のハードルが高い連中がやるべきものなんだ、という認識を改めて持ったのはバトラーツのおかげかもしれない。その連中がそれぞれバトラーツを卒業して分かれて行った。そして、今度の11・5バトラーツ解散興行に再び集まってくる。なんか当時を思いながらゾクゾクしてきますね。あらためて、訊きますがバトラーツを、いままでやり続けてきて正解だった?

石川 正解だったと思いますよ。絶対に忘れちゃいけない部分を、評価されようが評価されまいが一貫してやり続けてきた。途中でフェードアウトしたら俺たちのバトラーツ伝説の誇りが許さない。だから、続けてきた。


もう用はないんだろ?だったら消えてやるよ。

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―「幕引きをする必要はないんじゃない?」とは言いたくない。なぜなら、あれだけ身を削ってきた石川選手に失礼だと思うから。

石川 バトラーツはもう団体じゃないんですよ。10年前から。だって所属選手が2人とか3人。これはもう団体じゃないですよ。だけれども、みんな集まってくるから、クオリティーの高い興行は出来ていたんですよ。しかし、この先、どんなに身を削って試合をやろうが、やる甲斐がないんです。そのうち「あれ、バトラーツって、まだやってるの?」って言われるに決まっている。そんなふうになるのは、これまで身を削ってきた誇りが汚されるようでもったいないじゃないですか。だから、ちょうど15周年で区切りもいいし、いい潮時だろうと。

―プロレスファンは無くなってから気づくんじゃない? バトラーツの必要性。なんでもそうなんだ。あとで気づく。真剣なものは素晴らしいが重い。重いのは疲れるんだね、いまの人は。軽くて楽なものを求める。そんな時代だから、身を削る側とすれは甲斐がないのも良く分かる。

石川 「俺たち、もう用はないんだろ?だったら消えてやるよ。さようなら」です。

―バトラーツの最後。一貫してこれまで続けてきた意味をたっぷり見せつけてほしい。

石川 自分の友人がこう言ってました。「人は金を残すか、名を残すか、人を残すか」。俺はどれに当てはまるんだろうと思った。きっと人を残したんでしょうね。素晴らしい選手たちがバトラーツから育っていて、人が残ったんじゃないかな。それと人の人生を揺さぶるような感動を振りまき続けてきたのかなと思う。

―バトラーツをやり続けてきた歴史の重みはなんと言っても凄い。しかも、人から与えられたことを続けるのではなくて、一人でやり続けるというのは厳しいし、質が違う。

石川 昔、猪木さんのトークイベントがあって、自分とサスケさんがゲストで呼ばれた。猪木さんが「ヨシ! お前らの夢は何なんだ」となった。サスケさんは「東北にプロレスを根ざしたい」と言った。自分は「人の人生を変えてしまうような、そんなプロレスラーになりたい」と言った。その先に「あなたのようにね」という見えない言葉があるんだけど。

―ほう、小説的だな。バトラーツ旗揚げの頃の話ですね、たぶん。ですから、猪木さんに、そういうことを言うことによって、やり遂げるぞと決意したのかもしれない。

石川 ええ、そうかも。


矢吹丈と力石徹のようだ
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―いっぱい人を育ててバトラーツから旅立っていった。その連中が11・5解散興行に集まってくる。

石川 これだけは言っておきますが、思い出興行じゃないですからね。だから世間に喧嘩を売るためのカードを並べてるんです。

―分かってます、分かってます。石川雄規vs池田大輔、澤宋紀vsスルガマナブというカードですから。元祖バチバチと現代バチバチ。最初にバトラーツを旗揚げした時の意気込みと変わらないですね。

石川 まったく変わってない。馬鹿みたいに変わってない。野次馬を集めるためにカードを作っているじゃないんです。表現なんですよ。バトルアート。格闘芸術。相手を殴る蹴る。一番原始的なものが美しく見える瞬間。そこに何が見えるんだろう。バトラーツのスタートはそれだった。夢とか希望とか誇りとか。それがにじみ出てくるものが、お客さんのハートをつかむ。有名選手を並べて野次馬を集める気なんてさらさらない。いつもいつも俺たちは無名だけど、有名選手に負けないくらいに凄まじいスーパーメジャーなんだという気持ちでやってきましたから。
試合が終わってロビーに出て行く。するとファンがみな泣いてるんです。いい映画を観たあとみたいな。そんな団体がどこにある?「なんでこいつら夢中になってこんなことやっているんだ。自分たちも頑張って生きなきゃな」と思い、自然と目頭が熱くなってくるような…。

―それがバトラーツの世界なんだな。

石川 石川&バトラーツのワールド。だからカードだって、極端なことを言えば、同じようなカードの繰り返しですよ。しかし、寅さんシリーズを見てください。マドンナ一人だけが新しくて毎回登場するのは同じ人ばかり。しかもストーリーは寅さんが柴又に帰ってきて恋に落ちて、失恋して旅に出るパターンが多い。だけど感動するんですよね。

―バトラーツの世界。その世界の中で池田大輔との一騎打ちは宿命的でもある。

石川 大ちゃんにチラッと話した。そしたら「シングルしかないでしょう」と言う。「そうか、そうだよな」という感じですね。

―激しく戦える対戦相手がいるっていうのは素晴らしいことですよ。

石川 あしたのジョーの矢吹丈と力石徹のようなもんですね。「美しき狼たち」の“あいつには言葉はいらないさ 黙っているだけで心がかよう”ですよ。
ともかく大ちゃんとは2度目の心中マッチ。


世間を振り向かせるために

―え、心中マッチ?

石川 大ちゃんがフーテンプロ旗揚げの時(2005年4・24横浜赤レンガ倉庫)、俺とマジで心中して業界から消えようと思っていたらしいんですよ。しかし、なんだか知らないけど生きちゃってね(笑)。

―だから2度目の心中マッチ。

石川 ええ。つまり、いまだに世間に噛みついている俺たちが世間に対してね、胸ぐらを掴んで振り向かせるために命懸けで闘うわけですよ。

―プロレスラーの誇りのためですね。

石川 自分たちがやってきたのがプロフェショナルレスリングなんだという誇り。大きな組織のプロレスラーが「プロレスがどうの、こうの」と言っているが、何がプロレスだ、馬鹿野郎。これがプロフェショナルレスリングなんだよと。俺たちを超えるヤツらがいるのか。業界のヤツらは俺たちの試合を凄い凄いと言うが、実は見て見ぬフリをして、見なかったことにしているだけじゃないか。バトラーツは禁断の果実なんです。だから見ても見なかったフリをする。

―もっとマスコミも取り上げてもよかった。

石川 マスコミには黙殺されてきた。たとえば大きな料理店でおいしい料理はこっちだとマスコミは宣伝しているのに、こっちの店は小さくてボロボロ。でも、凄まじくうまい。だから食べなかったことにしようということです(笑)。

―赤レンガ倉庫の池田大輔との試合はそうだった。魂が打たれる試合。凄まじい試合だった。

石川 あの試合はお互いにボロボロになってね。動けなくなるんけど、何か動いているように見える。年齢を重ねて動きがぬるくなるんじゃなくて、より気持ちが激しくなっていくわけです。確かに物理的には若いときのほうがスピードがあったかもしれない。しかし、それ以上にみえてしまう。


猪木さんの文学的なプロレスを引き継いだ

―今回の一騎打ちはお互いにさらに年齢を重ねた。

石川 もっとボロボロになっている(笑)。でも、さらに激しく見えると思いますよ。

―プロレスは経験の積み重ねなんですよね。いくら激しくやろうが、そこに情念がなければ凄さは伝わらない。だからプロレスは奥深いんです。

石川 俺は猪木イズム。猪木さんの戦いを見て感化された。猪木さんの闘魂の中にはいろんな引き出しがある。その闘魂の引き出しの中で誰も引き継いでいない唯一のものがある。

―それは?

石川 文学的な部分。猪木さんには文学的なプロレスがあった。行間を読ませるというような…。僕はそこに感化されて、自分の生き様と重ね合わせてプロレスをしてきた。

―うん、うん。行間のプロレス。情緒的。心のヒダヒダが見えてくるような…。

石川 いまは体育会系のプロレスばかり。「僕はプロレスが好きなんだ。愛している」。だけど猪木さんはそんなことを一回も言った事がない。

―そうなんだ、一度も言わなかった。猪木イズムをきちんと受け継いでいるレスラーは、お客さんに向けて言葉を発しない。天に向かって叫んでいる。その姿を見て心を察して「ああ、こいつはこんな思いで闘っていたのか!」と感動した。今のレスラーの多くはお客さんに向けて、僕はプロレスが好きなんだ。こう思ってるんだ!とダイレクトに訴えている。ほら、よく「頑張りますから、応援してください」という挨拶。あれもそう。アマチュアがよくやるけど、そんなプロレスラーが増えてきた。まさに体育会系のプロレスなのかもしれない。

石川 ええ。俺はそれができない。そんなのクソ食らえですよ。

―石川さんはできっこない(笑)。ひょっとしたら石川さんは今の時代のプロレスには合わないのかもしれない。情緒のレベルが高すぎるんだ(笑)。

石川 俺は本当は絵を描いて暮らしていたほうが合っていたのかもしれない。けれど、猪木さんのプロレスを通じて、自分も人生、世の中と闘うということが必要なんじゃないかと小学生の時に思った。

―え、小学校の時? 早熟(笑)。

石川 よい子とか優等生じゃない、何かを求めていました。その何かを求めている時に、世間と闘っている猪木さんを見てしまった。生き方を見たんですよ。男の生き方を。これなんだと思った。そして、猪木さんを見ていることで人生を変えられたんですね。俺の生き様は規模は猪木さんよりも小さいけれど、そんな俺の生き様を見て人生を変えてしまった人もいっぱいいるんですよ。会社を興した。会社を飛び出した。家出してきちゃった…など。


バトラーツはラストサムライ

―プロレスで人の人生を揺さぶるのって少ないですよね。

石川 いまのプロレスはダイナミックで華やかだけど、ディズニーランドなんですよ。「楽しかった! すごい良かった!」なんです。でもディズニーランドに行っても人生が変わるか。変わらないじゃないですか。

―ディズニーランドプロレスかあ。石川さんはディズニーはできない。まず資金がない(笑)。

石川 俺たちは資本がないから、ディズニーランドなんかできない。だから狭い小屋で、死ぬ思いで究極のものを作り上げていくしかないわけですよ。

―いまのプロレスは間口も広いし、技という部分では非常に多くのものが吸収できるし、そういう技を持っている選手もいることはいる。しかし、技が生かされるかどうかは使う相手次第。肚が据わってないと技は生きてこない。たとえば本物のサムライは剣を抜いて闘う時、相手に斬られるということを怖がらずに命を捨てて向かっていく。斬られることを少しでも怖がったら、逆にスパッと斬られてしまって命を落としてしまう。それと同じでバトラーツの選手たちは身を削って闘うサムライのようだった。11・5の解散興行はバトラーツに「ラストサムライ」の魂を見に行くつもりです。


【対戦カード】
■第一試合(15分一本勝負)
 矢野啓太 vs 竹嶋健史
■第二試合(155分一本勝負)
 華 名 vs 雫あき
■第三試合(20分一本勝負)
 小野武志 & 土方隆司 vs 田中純二 & 真霜拳號
■第三試合(20分一本勝負)
 アレクサンダー大塚&竜司ウォルター vs スーパータイガー&三州ツバ吉
□インターミッション
 宮内美穂 他
■セミファイナル(30分一本勝負)
 稔 & 日高郁人 vs 臼田勝美 & 山本裕次郎
■ダブルメインその1(30分一本勝負)
 澤 宗紀 vs スルガマナブ
■ダブルメイン最終試合(30分一本勝負)
 石川雄規 vs 池田大輔 



東日本大震災復興支援チャリティープロレス「ALL TOGETHER」
8/27(土)日本武道館
★チケットはコチラ!


【全対戦カード】
<第10試合 60分1本勝負 ALL TOGETHER NOW!>
棚橋弘至、諏訪魔、潮崎 豪
vs杉浦 貴、中邑真輔、KENSO

<第9試合 60分1本勝負 BELIEVE THE POWER OF "Prowrestling!">
小橋建太、武藤敬司
vs飯塚高史、矢野 通

<第8試合 30分1本勝負 NO FEAR! GO AHEAD!!>
秋山 準、佐々木健介
vs大森隆男、高山善廣

<第7試合 30分1本勝負 MIDSUMMER ENCOUNTER IN BUDOKAN>
西村 修、永田裕志、小島 聡、天山広吉
vs吉江 豊、森嶋 猛、浜 亮太、曙

<第6試合 時間無制限 デストロイヤー杯争奪 ALL TOGETHER スペシャルバトルロイヤル>
特別立会人:ザ・デストロイヤー氏

ヒデオ・サイトー/石井智宏/外道/渡辺高章/高橋広夢/KUSHIDA/
本間朋晃 /井上 亘/S・S・マシン/西川 潤/梶原 慧/宮原健斗/リ・
チェギョン / 征矢 匠/曹駿/中之上靖文/MAZADA/渕 正信/レネ・
デュプリ/ジョー・ドーリング/ザック・セイバーJr/井上雅央/小川良成/
田上 明(順不同)

<第5試合 30分1本勝負 ONE NIGHT REUNION>
獣神サンダー・ライガー、船木誠勝、佐野巧真
vs鈴木みのる、タイチ、青木篤志

<第4試合 30分1本勝負 JUNIOR ONE NIGHT CARNIVAL>
プリンス・デヴィット、田口隆祐、鈴木鼓太郎、中嶋勝彦、KAI
vs金本浩二、稔、金丸義信、KENTA、平柳玄藩

<第3試合 30分1本勝負 OVER THE BORDER>
真壁刀義、齋藤彰俊  
vs後藤洋央紀、太陽ケア

<第2試合 30分1本勝負 FIGHTING FOR FUTURE>
谷口周平、真田聖也、内藤哲也  
vs高橋裕二郎、征矢 学、モハメド ヨネ

<第1試合 30分1本勝負 ALL TOGETHER オープニングマッチ SUNRISE OF J>
大和ヒロシ、BUSHI、石森太二、飯伏幸太
vsリッキー・マルビン、近藤修司、カズ・ハヤシ、タイガーマスク