世界最大のスポーツエンターテインメント団体WWEが、もう間もなく、7月1日(金)&2日(土)に東京・両国国技館で開催する「WWE Live Japan」。このツアーには日本人スーパースターの中邑真輔とASUKA(華名)が参戦、WWEと契約後、初の凱旋ということで大きな話題となっている。さらに今ツアーでは、日本で大活躍したスーパースターがもうひとりやってくることになった。これも凱旋と言っていいのだろう。新日本プロレスのトップ外国人として闘っていたAJスタイルズである。

 AJはかつて、“WWEにいかない大物”として各地でトップを張ってきた。アメリカ・ジョージア州出身で、1998年にデビュー。彼の存在が知られるようになったのは、2002年にTNAへ参戦してからのことだろう。ジャパニーズルチャと海外で言われる日本のスタイルをモチーフにした無差別級の闘い。Xディビジョンと呼ばれるこのカテゴリーに息吹を吹き込んだひとりが、AJだったのだ。従来のようなウェート制ではなく、リングを立体的に、最大限に使うのがXディビジョンの闘い方。その初代王者がAJで、通算で6度ベルトを巻いている。彼なくしてXディビジョンの発展はなかったとしても過言ではないだろう。

 Xディビジョンからは後のビッグネームが次々と輩出された。ロウ・キー、クリストファー・ダニエルズ、クリス・セイビン、アレックス・シェリー、フランキー・カザリアンなど、枚挙にいとまがないほどだ。彼らはアメリカのみならず、しだいに日本にも照準を合わせていく。AJの初来日は、2003年1月のZERO―ONEだった。初めての日本では、ロウ・キーとXディビジョンのなんたるかを披露。帰国後にはあのジェフ・ジャレットを破りNWA世界ヘビー級王座初戴冠となった。一見、Xディビジョンはジュニアのカテゴリーと思われがちだが、無差別級への扉を開いたのがAJ。後にスーパーヘビー級のサモア・ジョーがXディビジョン王者になったことからも、この王座がフレキシブルなタイトルであることがわかるだろう。

 Xディビジョンの開拓者として活躍していたAJながら、残念なことに彼のよさが日本では十分に伝わらなかった。来日したとしても、いずれも単発だったからだ。売れっ子だからこその多忙スケジュールと言ってしまえばそれまでだが、日本のファンには不運であった。

 しかしながら、TNAを退団後、主戦場を日本に定めてからは状況が一変した。14年6月、オカダ・カズチカを襲撃しBULLET CLUB(バレットクラブ)への加入を表明。過去にも新日本への登場はあったが、外国人ユニットへの加入により、継続参戦が可能になった。ここから一気に評価が上昇、ものすごい勢いで新日本のトップ外国人レスラーに躍り出た。なんと、初登場から1カ月でIWGPヘビー級王座を奪取。外国人レスラーの戴冠は、ブロック・レスナー以来9年ぶりという快挙だった。

 AJはその後、棚橋弘至からもIWGPヘビー級王座を奪取してみせた。どんな相手とも好勝負を連発するのは、「90年代のジャパニーズスタイルに大きな影響を受けた」から。日本のプロレスからインスパイアされたXディビジョンでの経験が大きく活かされたのだ。
今年1月、新日本の東京ドームでは中邑真輔との初対決が実現。試合には敗れたものの、ここでも激闘を展開した。そしてこの初対決が、その後の両者に大きな意味を持つこととなる。中邑が新日本を退団しWWEと契約。AJもBULLET CLUBから追放される形で日本から離れた。そして、1・24「ロイヤルランブル」でWWEに登場。中邑と同様、AJもAJのままでWWE のリングに立った。こちらも破格の待遇と言っていい。
しかも、AJの場合はNXTを通過せずいきなりWWEのメインクラスに割り込んできたから驚きだ。「ロイヤルランブル」翌日のロウにも引き続き登場し、クリス・ジェリコと対戦。これに勝つと、ジェリコとの遺恨が勃発した。「ファストレーン」での一騎打ちでもAJが勝利すると、ジェリコは「認めたくはないがヤツの実力は認めざるを得ない」と3度のシングルマッチを経てタッグを結成。タッグ王座奪取をめざし“Y2AJ”がスタートしたのである。

 ところが、ニューデーの王座に挑んだ試合後、ジェリコがAJを襲撃し、絶縁宣言。再発した遺恨は4・3「レッスルマニア32」へと持ちこまれた。

 ここで勝ったのは、ジェリコだった。日本育ちのジェリコもまた、当時のジュニアスタイルから大きくインスパイアされたレスラーだった。先輩の意地、ということなのだろう。 それでも、AJの“祭典”出場は画期的出来事だった。しかもこれがクライマックスではなく、さらなる展開が待っていたのだ。それは、WWE世界ヘビー級王座挑戦という最上級のチャンス。WWEデビュー戦が同王座戦だったとはいえ、こちらはあくまでも30人参加の時間差バトルロイヤルだった。祭典翌日のロウにおける4WAYマッチでジェリコを破り次期挑戦者に決定。5・1「ペイバック」にて、「レッスルマニア32」のメインを飾ったロマン・レインズのベルトにチャレンジした。もちろん試合はメインイベント。敗れたとはいえ、初登場から3カ月強での王座挑戦&PPVメイン。これはすごいことなのだ。

 そしてこの試合後には、ビンス・マクマホン会長が即、シェイン&ステファニー・マクマホンとともに5・22「エクストリーム・ルールズ」での再戦を決定した。5・2ロウでは元BULLET CLUBのアンダーソン&ギャローズとも再会のWWE初合体を果たしてみせた。それだけに、WWEの中心人物として凱旋するAJに期待せずにはいられない。対戦相手が誰になるかも含め、7・1&2両国は必見である。

(構成・文:新井 宏)


■大会名:WWE Live Japan
■開催日:7/1(金)〜7/2(土)
■会場:国技館 (東京都)

2016-06-23 18:42 この記事だけ表示

 7月1日(金)&2日(土)、東京・両国国技館で開催される「WWE Live Japan」。世界最大のスポーツエンターテインメント団体が今年も間もなく、日本にやってくるわけだが、その絶対的スケールを地球規模で世に知らしめているのが、年に一度おこなわれる祭典「レッスルマニア」である。

 2016年は、32回目となる「レッスルマニア32」が4月3日(現地時間)、アメリカ・テキサス州ダラス近郊のアーリントンで開催された。舞台となったのはNFLダラス・カウボーイズの本拠地であるAT&Tスタジアム。ここにはなんと、10万1763人の大観衆が詰めかけた。この数字はWWEが打ち立てたレッスルマニア動員の新記録。ハルク・ホーガンがアンドレ・ザ・ジャイアントをボディースラムで投げつけた1987年の「レッスルマニア3」。このときの9万3173人を大きく上回ったと同時に、有料動画配信サービスWWEネットワークの視聴者を合わせれば、ライブ&生中継で史上最大の祭典を体感した人の数は天文学的数字になるだろう。

 では、歴史的偉業を成し遂げた「レッスルマニア32」でなにが起こったのか。7月の日本公演を前に、ここでおさらいしておこう。
1年以上も前から翌年の開催地が発表される「レッスルマニア」(2017年はフロリダ州オーランド)。チケット発売と同時に多くがさばけてしまうのだが、今年の場合、ありえないサプライズから一気に祭典ムードに加速度がついた。それは、長らくWWEから離れていたビンス・マクマホン会長の息子シェイン ・マクマホンの電撃復帰にあった。

 シェインがWWEに姿を現したのは2月22日、デトロイトでの出来事だった。なんの前触れもなく約7年ぶりに姿を見せたシェインは、「ロウをコントロールする」と発言。これに対し父のビンスは「試合で勝てば許そう」とやり返した。しかもその舞台は「レッスルマニア32」。さらには、祭典で絶対の強さを誇るアンダーテイカーを相手に指名したのだ。そのうえ、試合形式はテイカーの庭とも言える金網地獄ヘル・イン・ア・セル・マッチ。ブランクがあり、現役プロレスラーとも言えないシェインにとっては無謀すぎるチャレンジだ。そしてこの試合には、双方に条件がかけられた。シェインが勝てば、もちろんTV番組ロウを仕切る権利が与えられる。テイカーが負けた場合、「最後のレッスルマニア出場」になるという。これは事実上のテイカー・ラストマッチを示唆していると言えなくもない。突如復活したマクマホン家のファミリー闘争は、テイカーの最期にまで影響を及ぼそうとしていたのである。

 そして迎えた「レッスルマニア32」。シェインの入場時、彼の息子3人が父と一緒にリングに向かった。これは後々重要な意味を持つことになるだろう。彼らはプロレスビジネスに関わるマクマホンファミリーの5代目。彼らのなかからWWEを引き継ぐ者が現れる可能性はかなり高いと考えていい。それが実現すれば、このときの映像が何度もリピートされるはず。こうしてマクマホン一家は歴史を紡いでいく。一時は組織から離れたシェインもこうして戻ってきた。金網上からの決死の6メートルダイブは、今大会のハイライトシーン。彼にとっては捨て身のダイブが持ち味なのだが、ブランクも影響したか、金網のてっぺんに立ったときには一瞬躊躇したかのような表情もうかがえた。それでも意を決してのダイブを敢行。案の定かわされたものの、それはまるで、“マクマホン家の掟”を見せつけられたかのようなシーンでもあった。
 敗れたとはいえ、この日一番のインパクトを残したのはシェインだった。WWEとはやはり、マクマホン家の愛憎ドラマ抜きに語ることはできないのか。

 マクマホン家と言えば、ステファニー・マクマホンの夫であるトリプルHを忘れることはできない。WWE世界ヘビー級王者としてメインのリングに立ったトリプルHが迎え撃ったのは、ロマン・レインズ。ワイルドサモアンズのシカ・アノアイを父に持つレインズには、大エース候補として2年ほど前から大プッシュが始まった。「レッスルマニア」への道となる「ロイヤルランブル」で優勝。その流れから挑んだ昨年の「レッスルマニア31」ではブロック・レスナーに挑戦も、最後の最後でマネー・イン・ザ・バンク保持者のセス・ロリンズに権利を行使されベルトを持っていかれてしまう。トリプルHの権力者派閥オーソリティーからは目の敵にされ、今年の「ロイヤルランブル」では史上初めてWWE世界ヘビー級のベルトが30人参加時間差バトルロイヤルにかけられた。しかもレインズがもっとも不利な入場一番手。これを勝ち抜くのは至難の業で、最終的にはトリプルHがベルトをレインズから計画通りに引っぺがしてみせた。悲劇の主人公とも言えるレインズへの支持が集まりそうなものだが、オーソリティーから課せられる試練がかえって会社側からのプッシュに映り、WWEユニバースからのレインズ離れを引き起こしてしまう。それでも「レッスルマニア32」では逆風のなか、レインズがトリプルHから王座奪回に成功した。トリプルHを倒したという巨大な実績を盾にこの後、王者としての信頼をどうやって勝ち得ていくのか。そこが、大きな見どころとなったと言えるだろう。

 新記録を更新した年間最大のイベントだけに、豪華ゲストも盛りだくさんだった。登場予告していたザ・ロックがワイアットファミリーから挑発され、急きょエリック・ローワンと試合をおこなうビッグサプライズ。しかもそこには、肩の負傷で欠場中のジョン・シナも駆け付けた。ニューデイvsリーグ・オブ・ネーションズの試合には、ストーンコールド、ショーン・マイケルズ、ミック・フォーリーのレジェンドたちが登場、大パーティーを演出してみせた。

 また、好試合も続出した。とくに、新調となったWWE女子王座が賭けられたシャーロットvsサシャ ・バンクスvsベッキー・リンチのトリプルスレットマッチは従来のディーバマッチとは一線を画すスリリングな展開となった。リック・フレアーの娘であるシャーロットが新王者となったこの試合を大会ベストマッチに推すファンも多い。さらには新日本からWWEへ移籍したAJスタイルズが日本育ちのスーパースター、クリス・ジェリコと一騎打ちをおこなうなど、どこから見ても話題に事欠かないビッグイベントになっていた。

 さらには、NXTから上がってきたスーパースターの比率が増えてきたのも今回の特徴だった。WWE女子王座戦の3人をはじめ、ラダーマッチを闘ったケビン・オーエンズ、サミ・ゼイン。アンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤル優勝のバロン・コービンもそうだ。そう考えると、日本公演に凱旋する中邑真輔やASUKAの来年が楽しみになってくる。もちろん、欠場中のイタミ・ヒデオにも2度目の祭典出場を期待したい。それだけに、今回の日本公演はとてつもなく価値が高い。7月1日(金)、2日(土)は、日本のWWEユニバースにとっての“祭典”なのだ。

(構成・文:新井 宏)


■大会名:WWE Live Japan
■開催日:7/1(金)〜7/2(土)
■会場:国技館 (東京都)

2016-06-23 18:33 この記事だけ表示

 世界最大のスポーツエンターテインメントを提供するWWEが、今年も日本の夏を賑わせる。来る7月1日(金)&2日(土)、東京・両国国技館で「WWE Live Japan」が開催されるのだ。

 WWEの日本公演は、いまや伝説となった“ザ・ロック降臨”の2002年3月1日・横浜アリーナ大会以来、通算で18回目 。夏の両国での開催は5年連続となる(14年は大阪でも開催)。

 しかも今年は、ロック狂騒曲が吹き荒れた横アリ以来の歴史的公演となることが確実なのだ。というのも、日本からアメリカへと渡った中邑真輔、ASUKAの凱旋が決定。しかも、中邑と新日本の東京ドーム大会で対戦したAJ・スタイルズまで、WWEスーパースターとして再びこの地にやってくる豪華版である。もうすでに歴史的2日間が約束されたようなものだろう。

 中邑がWWEと契約をかわしたというニュースは、一瞬にして世界中を駆け巡った。待望のデビューは4月1日、NXT「テイクオーバー:ダラス」。つまりは、年間最大イベントであるレッスルマニアがおこなわれる“レッスルマニアウィーク”での初陣である。あらかじめ大々的にアナウンスされていたことも加え、破格の扱いであることは明白だった。

 しかも驚いたことに、中邑はSHINSUKE NAKAMURAのリングネームで登場した。WWEの場合、これまでの経歴はなかったことにしてフルモデルチェンジするケースがほとんど。先にWWE入りした元NOAHのKENTAもイタミ・ヒデオの新リングネームでデビューした。新日本にカムバックしたヨシ・タツも、このリングネームで闘っていた。WWEが求めるキャラクターへの変身が求められていたのである。

 最近ではサモア・ジョー、オースチン・エリーズらが、ほとんどそのままのキャラクター&スタイルでWWEにやってきており、中邑が前代未聞という表現は必ずしも的確ではない。が、中邑が最近の傾向における最高峰であることに変わりはないだろう。

 中邑真輔は、中邑真輔そのままだった。エビ反りのポーズや痙攣式のストンピングなど“たぎる”ムーブもそのまま。対戦相手が日本スタイルを熟知するサミ・ゼイン(元エル・ジェネリコ)とあって、試合もスイングした。いまWWEで求められているのは、ジャパニーズスタイルの闘い。そう言っても過言ではないほどの好反応が返ってきた。しかも、世界中から――。

 有料動画配信サービス「WWEネットワーク」の誕生により、その場にいなくても試合やオリジナル番組がライブで見られるようになった。日本でも早朝から画面に食い入ったファンも多いことだろう。このシステムが彼の存在感をさらに大きくした。そういう意味でも、中邑は時代の寵児と言えるのかもしれない。

 おなじことは、同大会で日本人初のNXT女子王座を獲得したASUKAにも言えるのではないか(日本人のWWE女子王者はブル中野以来22年ぶり)。華名からリングネームをASUKAに変更したとはいえ、彼女も基本スタイルやキャラクターは日本時代と変わっていない。キックや関節技を駆使した闘いは、WWE女子戦線では異端に見えた。が、これこそWWEが期待していたものだったのだ。

 ではなぜ、WWEが華名に白羽の矢を立てたのか。それは、NXTにおける女子部門の改革を示している。ベルトを奪ったベイリーとのNXT女子タイトルマッチは、かつてのディーバのイメージを覆す内容だった。ASUKAの前にはシャーロット(現WWE女子王者)、サシャ・バンクス、ベッキー・リンチらが先陣を切ってWWEに昇格した。NXTを経験した選手たちが、内容重視の女子プロを展開している。ASUKAが入団したのは昨年9月。シャーロットらのあとを継ぐかたちで、NXTのさらなる充実を託されたのである。

 トリプルHが心血を注いでいるというNXTは、いまやロウ、スマックダウンにつぐ第3のブランドとして認知されつつある。一部にはロウ、スマックダウンよりもNXTを熱烈に支持するファンがいるほどだ。かつてはOVWやFCWというファーム団体が1軍昇格への登竜門として機能していたが、現在はWWEが統括して運営。NXTがNXT独自の価値観を築いており、そこに日本人の中邑とASUKAが所属している。しかもさらなる発展に向け大きな戦力になっている。これは大いに誇っていい。

 そんな2人が、WWEスーパースターとして揃って日本に帰ってくる。中邑人気はますます世界に拡散。試合中に頭を切ったというちょっとした負傷がニュースになるくらい、注目度が高いのだ。ASUKAも無敗のままNXT女子王座を防衛中。凱旋時にはどんな状況で両国のリングに上がるのか。いまから楽しみで仕方がない。

(構成・文:新井 宏)


■大会名:WWE Live Japan
■開催日:7/1(金)〜7/2(土)
■会場:国技館 (東京都)

2016-06-23 18:25 この記事だけ表示