【WWE日本公演 開催直前コラム(2)】新記録樹立のWWE「レッスルマニア32」
7・1&2日本公演は、日本人ユニバースのための祭典に![WWE]

 7月1日(金)&2日(土)、東京・両国国技館で開催される「WWE Live Japan」。世界最大のスポーツエンターテインメント団体が今年も間もなく、日本にやってくるわけだが、その絶対的スケールを地球規模で世に知らしめているのが、年に一度おこなわれる祭典「レッスルマニア」である。

 2016年は、32回目となる「レッスルマニア32」が4月3日(現地時間)、アメリカ・テキサス州ダラス近郊のアーリントンで開催された。舞台となったのはNFLダラス・カウボーイズの本拠地であるAT&Tスタジアム。ここにはなんと、10万1763人の大観衆が詰めかけた。この数字はWWEが打ち立てたレッスルマニア動員の新記録。ハルク・ホーガンがアンドレ・ザ・ジャイアントをボディースラムで投げつけた1987年の「レッスルマニア3」。このときの9万3173人を大きく上回ったと同時に、有料動画配信サービスWWEネットワークの視聴者を合わせれば、ライブ&生中継で史上最大の祭典を体感した人の数は天文学的数字になるだろう。

 では、歴史的偉業を成し遂げた「レッスルマニア32」でなにが起こったのか。7月の日本公演を前に、ここでおさらいしておこう。
1年以上も前から翌年の開催地が発表される「レッスルマニア」(2017年はフロリダ州オーランド)。チケット発売と同時に多くがさばけてしまうのだが、今年の場合、ありえないサプライズから一気に祭典ムードに加速度がついた。それは、長らくWWEから離れていたビンス・マクマホン会長の息子シェイン ・マクマホンの電撃復帰にあった。

 シェインがWWEに姿を現したのは2月22日、デトロイトでの出来事だった。なんの前触れもなく約7年ぶりに姿を見せたシェインは、「ロウをコントロールする」と発言。これに対し父のビンスは「試合で勝てば許そう」とやり返した。しかもその舞台は「レッスルマニア32」。さらには、祭典で絶対の強さを誇るアンダーテイカーを相手に指名したのだ。そのうえ、試合形式はテイカーの庭とも言える金網地獄ヘル・イン・ア・セル・マッチ。ブランクがあり、現役プロレスラーとも言えないシェインにとっては無謀すぎるチャレンジだ。そしてこの試合には、双方に条件がかけられた。シェインが勝てば、もちろんTV番組ロウを仕切る権利が与えられる。テイカーが負けた場合、「最後のレッスルマニア出場」になるという。これは事実上のテイカー・ラストマッチを示唆していると言えなくもない。突如復活したマクマホン家のファミリー闘争は、テイカーの最期にまで影響を及ぼそうとしていたのである。

 そして迎えた「レッスルマニア32」。シェインの入場時、彼の息子3人が父と一緒にリングに向かった。これは後々重要な意味を持つことになるだろう。彼らはプロレスビジネスに関わるマクマホンファミリーの5代目。彼らのなかからWWEを引き継ぐ者が現れる可能性はかなり高いと考えていい。それが実現すれば、このときの映像が何度もリピートされるはず。こうしてマクマホン一家は歴史を紡いでいく。一時は組織から離れたシェインもこうして戻ってきた。金網上からの決死の6メートルダイブは、今大会のハイライトシーン。彼にとっては捨て身のダイブが持ち味なのだが、ブランクも影響したか、金網のてっぺんに立ったときには一瞬躊躇したかのような表情もうかがえた。それでも意を決してのダイブを敢行。案の定かわされたものの、それはまるで、“マクマホン家の掟”を見せつけられたかのようなシーンでもあった。
 敗れたとはいえ、この日一番のインパクトを残したのはシェインだった。WWEとはやはり、マクマホン家の愛憎ドラマ抜きに語ることはできないのか。

 マクマホン家と言えば、ステファニー・マクマホンの夫であるトリプルHを忘れることはできない。WWE世界ヘビー級王者としてメインのリングに立ったトリプルHが迎え撃ったのは、ロマン・レインズ。ワイルドサモアンズのシカ・アノアイを父に持つレインズには、大エース候補として2年ほど前から大プッシュが始まった。「レッスルマニア」への道となる「ロイヤルランブル」で優勝。その流れから挑んだ昨年の「レッスルマニア31」ではブロック・レスナーに挑戦も、最後の最後でマネー・イン・ザ・バンク保持者のセス・ロリンズに権利を行使されベルトを持っていかれてしまう。トリプルHの権力者派閥オーソリティーからは目の敵にされ、今年の「ロイヤルランブル」では史上初めてWWE世界ヘビー級のベルトが30人参加時間差バトルロイヤルにかけられた。しかもレインズがもっとも不利な入場一番手。これを勝ち抜くのは至難の業で、最終的にはトリプルHがベルトをレインズから計画通りに引っぺがしてみせた。悲劇の主人公とも言えるレインズへの支持が集まりそうなものだが、オーソリティーから課せられる試練がかえって会社側からのプッシュに映り、WWEユニバースからのレインズ離れを引き起こしてしまう。それでも「レッスルマニア32」では逆風のなか、レインズがトリプルHから王座奪回に成功した。トリプルHを倒したという巨大な実績を盾にこの後、王者としての信頼をどうやって勝ち得ていくのか。そこが、大きな見どころとなったと言えるだろう。

 新記録を更新した年間最大のイベントだけに、豪華ゲストも盛りだくさんだった。登場予告していたザ・ロックがワイアットファミリーから挑発され、急きょエリック・ローワンと試合をおこなうビッグサプライズ。しかもそこには、肩の負傷で欠場中のジョン・シナも駆け付けた。ニューデイvsリーグ・オブ・ネーションズの試合には、ストーンコールド、ショーン・マイケルズ、ミック・フォーリーのレジェンドたちが登場、大パーティーを演出してみせた。

 また、好試合も続出した。とくに、新調となったWWE女子王座が賭けられたシャーロットvsサシャ ・バンクスvsベッキー・リンチのトリプルスレットマッチは従来のディーバマッチとは一線を画すスリリングな展開となった。リック・フレアーの娘であるシャーロットが新王者となったこの試合を大会ベストマッチに推すファンも多い。さらには新日本からWWEへ移籍したAJスタイルズが日本育ちのスーパースター、クリス・ジェリコと一騎打ちをおこなうなど、どこから見ても話題に事欠かないビッグイベントになっていた。

 さらには、NXTから上がってきたスーパースターの比率が増えてきたのも今回の特徴だった。WWE女子王座戦の3人をはじめ、ラダーマッチを闘ったケビン・オーエンズ、サミ・ゼイン。アンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤル優勝のバロン・コービンもそうだ。そう考えると、日本公演に凱旋する中邑真輔やASUKAの来年が楽しみになってくる。もちろん、欠場中のイタミ・ヒデオにも2度目の祭典出場を期待したい。それだけに、今回の日本公演はとてつもなく価値が高い。7月1日(金)、2日(土)は、日本のWWEユニバースにとっての“祭典”なのだ。

(構成・文:新井 宏)


■大会名:WWE Live Japan
■開催日:7/1(金)〜7/2(土)
■会場:国技館 (東京都)

2016-06-23 18:33 この記事だけ表示